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時の経営者
JーTEC
 小澤洋介社長

最先端組織培養ビジネスが
日本の「再生医療」を変える

日本初のヒト細胞組織培養事業会社として創設されたJ−TEC(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)は、自家培養表皮の事業化に目処が立ち、来年いよいよ商品化をむかえる。米国とは一五年もの差がある日本の組織培養事業の現場は、あらゆる面で困難な現実が立ち塞がっている。新社長に就任した小澤洋介氏に、再生医療ビジネスの現況と経営の要諦を聞いた。

 

   組織工学(ティッシュ・エンジニアリング)を技術基盤に、ヒト組織・細胞を製品化する日本初の企業として平成11年に設立したJ−TEC(愛知県蒲郡市三谷)は、自家培養表皮において治験(臨床試験)が完了し、いよいよ来年、商品化の目処が立った。
 従来型医療技術の延長にある維持療法ではなく、組織再生による根本治癒を目指す同社は、ヒト細胞・組織の培養、加工、また人工素材との組み合わせによる培養皮膚、培養軟骨、培養骨の研究開発、その成果に基づく製造・供給を業務とする。患者本人の細胞を培養するため拒絶反応がなく、低価格化や保険適用など国産のメリットは実に大きい。
 より多くの医療機関に培養(機能化)細胞・組織を提供することで、日本における新市場創出を目指す同社は、今後の医療に多大な質的変化をもたらすだけでなく、新市場自体も約20年後には9000億規模の巨大市場になると予想されている。
 同社の起源は、眼科医療器分野国内トップシェアの「ニデック」内で誕生した新事業開拓プロジェクトに遡る。初代社長はニデック社長の小澤秀雄氏が就任。大株主にはニデック、INAX、富山化学工業、UFJキャピタルが名を連ね、独立行政法人医薬品医療機器総合機構からは総額9.8億円の研究開発資金が融資された。特筆すべきは、従業員数40名にして資本金が34億2000万円と高額なこと。従業員は各分野のエキスパートが集結、資本金額の高さは、出資者の寄せる期待がいかに現実味があるかを示していよう。
 今年6月に社長に就任した小澤洋介氏は、小澤秀雄氏の次男。早稲田大学理工学部工業経営学科を卒業後、早稲田大学大学院理工学部研究科を修了。財団法人SRIインターナショナル(スタンフォード研究所)東京事務所に勤務し、競合分析に基づく新規事業参入、撤退戦略構築を主に国内外約50社の経営コンサルティング業務に従事。その後留学した小澤氏は、米国イリノイ州イリノイ大学大学院経営修士課程修了のほか、米国ペンシルベニア州ウォートン大学大学院上級経営プログラム修了、米国バージニア州バージニア大学大学院上級経営者プログラムを修了。
 平成8年に父・小澤秀雄氏が社長を務めるニデックに入社。国内外情報インフラストラクチャーの構築、人事制度改革、J−TEC設立支援、海外子会社の買収・経営等を手掛け、経営企画部部長、イタリア子会社役員、米国子会社役員等を経て、平成十六年六月、J−TEC社長に就任した。
  
 自家培養表皮につづき
  軟骨、角膜も事業化へ


  「国との交渉をはじめ、事業化目処までの道のりは実に長かった。しかし私をはじめスタッフ全員、日本の再生医療を創ってきた自負がある。研究から製造、販売まで全てをこなすベンチャーは極めて珍しい存在といえます」
  特にバイオベンチャーは、開発から発売までの期間が長く、手続きが多い上に費用がかかる。それ故、新しい体制構築が必要であり、同社では外部資金調達のため株式上場も視野に入っている。
 「今の日本の現状では、インプラントをあまりに海外に依存しすぎです。国益を考えれば一刻も早くこの分野を軌道に乗せ、国産体制にすべき。細胞をビジネスにしていいのか、といった倫理的声があるのも確かですが、米国とはすでに一五年の差があり、それを少しでも埋め、国産体制を構築することが私の使命であると考えています」
 今回事業化に目処の立った自家培養表皮は、当面医療用の重度熱傷患者のみが対象になる。すでに全国50前後の緊急医療センターと体制を構築中で、患者のために保険点数の交渉を国と開始している。また自家培養軟骨は来年末の完了を目処に治験段階まで進んでおり、2007年初頭には製品化の見通しがついている。同軟骨は、いままで主流だった液体状軟骨の弱点を克服した世界初の立体形状型軟骨としてすでに注目を集めている。角膜も順調に進行中で、2008年には事業化の目処がたっている。 
  同社は今年11月、現本社隣接地に新社屋を完成させたばかり。投資額は約15億円。最新鋭施設は世界最高クラスのテクノロジー施設で、GMPを満たす施設は国内ベンチャーでは日本初になる。
  「バイオベンチャーである限り、今度も資金負担が大きいことは変わりない。しかし私自身社会的意義を強く感じているし、事業化をしっかり果たしていくことが一番の使命と考えている。世論を引き連れ、100年200年とつづく世に求められる企業として確立させていきたいですね」
 メーカーとしての遺伝子を持ちながら、旺盛なフロンティア精神を併せ持つ。日本の再生医療現場に新たな道が拓く日は、すぐそこまで来ている。