SERIES
政界時評

公務員改革基本法が成立
  福田流「静かなる革命」始まる?
         
       久智 佳哉

 

 中央省庁人事の内閣一元管理を柱とした国家公務員制度改革基本法が6月6日、自民、公明、民主各党などの賛成多数で成立した。1947年の国家公務員法施行以来、約60年ぶりとなる官僚機構の抜本改革。有効に運用されれば、明治以来の縦割り人事制度を打破する画期的なこと。成立が困難視されながら、実現できたのは何故なのか。
 何と言っても、福田康夫首相の強い意向が大きい。「チーム安倍」を作り、官邸主導を掲げて官僚に決戦を挑んだ安倍晋三前首相と違い、福田首相は官僚をうまく使いこなすタイプ。公務員制度改革に対しては、自民党内に消極論が根強いことから、福田首相の腰も重かった。
 しかし、薬害肝炎訴訟などへの対応で、有効な手だてを示せない官僚の限界を痛感。ガソリン税の暫定税率復活や後期高齢者医療制度の導入などで国民の不満が募る中で、批判の強い官僚へのメスは避けて通れないと判断した。法案がつぶれれば、政権へのダメージは決定的になるとの危機感の裏返しでもある。
 福田首相は自民、公明両党の国対委員長に「公務員法案は今国会で通したいのでよろしく」と決意を伝えたのを皮切りに、党役員会などでも「柔軟対応」を強く指示。民主党の支持団体である連合幹部にも電話し、同党への働き掛けを依頼するなど目立たぬように八方手を尽くした。
 首相の決断に、「霞が関改革」に後ろ向きとのレッテルを張られたくない与党、民主党双方が乗っかった。官僚OBの町村信孝官房長官らから法案の骨抜きを狙った修正要求もあったが、「改革つぶしの戦犯になりたくない」と、逆に与野党実務者の合意に向けた協議は加速した。
 ある自民党幹部は「福田首相は最初から本気だった。これぞまさに福田流の『静かなる革命』。道路特定財源の一般化もそうだが、こういうやり方で行く」と指摘。今後、福田首相が徐々に指導力を発揮していくと予言する。
 とはいえ、合意の決め手になったのは、与党が民主党の主張に大幅に歩み寄る「丸のみ戦術」を繰り出したから。「ねじれ国会」下で法案を成立させるには、衆院で三分の二による再可決をするか、野党案に乗るしかない。今回は後者を採用したに過ぎない。
 機能不全とまで言われた国会だけに、公務員制度改革に道筋を開いたことは一つの成果だが、与野党協議の新たなルールが構築されたわけではない。これで福田首相の政権運営を評価しろというのも、とても無理な相談であろう。