COLUMN
コラム

 

ホントは恐ろしい 「国民生活金融公庫」 
     
借金はぎ取りの手法 



  
 突然、裁判所から「訴状」が届けられた。 
 普通の人なら、ギョッとする。 
 しかも、心当たりがなければなおさらだ。 

 小林アキラさん(もちろん仮名)の場合が、そうであった。 
 送り主は「名古屋簡易裁判所」。 
 昨年3月31日のことである。 

 小林さんを訴えてきたのは「国民生活金融公庫」 
 ええっ、国民生活金融公庫だって? 

 小林さんは、驚いた。 
 確かに自分は「コッキン」(国民生活金融公庫のこと)と 
 ある関係にある。 
 月々、借金の返済をしている相手がコッキンなのだ。 

 しかしその借金は厳密には自分のものではない。 
 借りたのは実の姉が経営している料理店の会社。 
 自分はその保証人になっただけだ。 

 この「保証人制度」というのは日本特有のいやらしい制度である。 
 大昔の頼母子講とこ無尽講の名残で、本人が破綻したら 
 ほかのものがその借金の返済の責を負うという、 
 なんとも貸し手にとっては都合のいい制度なのだ。 

 それはともあれ、小林さんのお姉さんの料理店つまり会社は 
 事業に行き詰まり、倒産。お姉さんは自己破産した。 
 となると、コッキンの借金の返済は保証人である小林さんの 
 両肩にかかってくる。 
  
 実の姉は平成7年に3000万円を借りた。 
 小林さんのお姉さんが自己破産したとき、借金は半分ほどに 
 減っていた。とはいえ1500万円超である。 
 そのあと「代位弁済」という小林さんの返済が始まるのだ。 

 さて、わたしは今回の取材で初めて知ったのだが、 
 借金の返済には時効があるらしい。 
 それが5年。 
 小林さんのお姉さんの会社が平成15年9月30日以降 
 支払いを怠っているので、時効は平成20年9月30日だ。 

 時効になれば、代位弁済者は主債務者の時効完成で 
 保証債務の消滅を主張するかもしれない。 
 だから「主債務の時効中断のための訴え」というのが、 
 今回のコッキンの訴状だった。 

 つまり、債務を確定するための手続き上の訴訟なのである。 
 この手の訴訟は良くあるケースらしい。 
 だからこそ、原告のコッキンは弁護士をたてることなく、 
 国民生活金融公庫の中村支店の一従業員を代理人として 
 たてたに過ぎない。 

 しかし、小林さんは普通の人だった。 
 何でコッキンからオレが訴えられるのだ。 
 一体全体どういうこっちゃ…。 

 それで弁護士に相談した。 
 北村明美弁護士だ。 
 北村弁護士はサラ金の過剰支払いの払い戻し訴訟の専門家 
 といっても過言ではない。 
  
 「なに、これ?」 

 北村弁護士の闘いが始まった。 
  
 すると、たかが債務確定=時効中断の簡単な裁判だと 
 たかをくくっていたコッキンサイドは慌てて弁護士を立てた。 
 大矢和徳弁護士である。 

 北村弁護士はコッキンから支払い明細を出させた。 
 これにより、小林さんのお姉さんと、その会社は、 
 いついくら返済し、小林さんはいつ、いくら代位弁済したのか。 
 そうして、残りの借金の総額はコッキンの提示した金額で 
 間違いないのか。 
 それを糺すために提出を要請した。 

 これで、いろんなことが分かってきた。 
 現在、この件は係争中なので、あまり詳しくは書かないが、 
 まずひとつ、これはおかしいな、と思ったことがある。 

 たとえば毎月30万円を返済するとの契約があったにしろ、 
 たとえば25万円しか振り込まなかったとしよう。 
 するとコッキンはこれを「預り金」とし、 
 その月の返済分は「遅延金扱い」となり、 
 この金額には遅延利息がかけられるのだ。 

 おいおい、高利と云われるサラ金にしろ、 
 返金した分は金額の多寡に関わらず返済として受け取る 
 ことになっているはずだ。 

 うちの記者がある都銀の担当者に別件で尋ねたとき、 
 「あ、それは契約書にうたってあるはずです」 
  
 契約書にどう書かれているかではない。 
 こんな契約が通常、倫理的、道義的に成り立つものかどうかである。 
 いまさらシェィクスピアの戯曲を持ち出すまでもないだろうが、 
 「借金を返せなかったら、そのときの金相場で金に換算し、 
  その重さの肉をもらう」という契約は、 
 例え形が整っていても有効とは云えないだろう。 

 まだある。 
 今回の裁判を起こすための書類作成に要した証書代金まで 
 借金の残額に上乗せされているのである。 
  
 こうした費用も借金に上乗せするとの契約がなされたいるとしたら、 
 もしもこの裁判で敗訴した場合は、どうするのだ。 
 北村弁護士は、その費用にしても金額が間違っていると指摘した。 

 細かい金額かもしれないが、勝手に金額を決め、 
 それを借金に上乗せするという行為は、許されるのか。 
 しかもその金額が間違っているのだとしたら、 
 コッキンのいう借金の残額も鵜呑みにはできない。 
 数字の打ち込みミスがないとは云いきれないからだ。 

 「こんなやり方はサラ金業者でもしません。 
  もしかしたらウラ金業者ぐらいではないでしょうか」 

 国民のための金融機関が、借金して倒産した場合は、 
 その連帯責任者に対して、 
 「寝たきり病人の布団をはいで借金の利息分として持っていく」 
 のと同じではないか。 

 本誌取材班は、すでに旧コッキンの担当支店、財務省、 
 東海財務局、現在の日本政策金融公庫などに取材を進めている。 
 その結果は、4月25日発行の小誌5月号に掲載する。